第11話 急いでいる会社の、急がない話

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連載小説『消える会社、残る原稿』 急いでいる会社の、急がない話

本作品はフィクションです。登場する人物、団体、店舗、サービス、出来事は架空であり、実在のものとは関係ありません。

火曜の午前九時半、木崎遼子は川沿いの部品メーカーの応接室で、舟木啓介が出した採用ページ案を読んでいた。

窓の外には、背の低い工場棟と、荷台を覆ったトラックが見える。応接室の壁には、部品の断面図が額に入っていた。会社名は、打ち合わせの記録にだけ正式表記で残し、公開用の資料にはまだ書かないことにしている。

採用ページ案の見出しは、簡潔だった。

現場を支える製造スタッフ募集。

その下に、製造、品質確認、出荷準備の三つが並ぶ。必要な人員も、勤務時間も、賃金も、別々の欄にある。

「これを一つの仕事として見せたい理由は何ですか」

木崎が尋ねると、舟木は椅子の背にもたれた。

「応募が集まらないからです。職種を分けると、どれも難しそうに見える。うちは来月から増産が決まっていて、急いでいます」

田名部は、机の上に置かれた工程表を見た。増産開始の欄は来月の一日。そこから逆算した採用予定日は、もう余裕がない。

「三つの仕事は、入社後に行き来できますか」

帆足が聞いた。

「繁忙時には手伝います。ただ、品質確認には別の教育がいる。出荷準備は早番が多い。製造は交替制です」

「なら、最初から一つとは言えません」

帆足の声は静かだった。

舟木は眉を寄せた。

「だから、細かく書けば応募が減ると言っています」

小日向は、持参した確認表を机の端へ置いた。答えは空欄のままだ。

勤務時間は職種ごとに同じか。教育の有無は。配属は誰が決めるか。繁忙時の応援は例外か、通常か。増産後も続く仕事か。

「減るかもしれません」

木崎は言った。

「でも、交替制の製造を選ぶ人と、早番中心の出荷を選ぶ人を、一つの言葉で集めてから分けるほうが、御社も困るはずです」

舟木は、返事をしなかった。

応接室の外を、作業着の二人が通った。片方が台車を押し、もう片方が伝票を見ている。窓越しの姿だけでは、どちらが何の担当かはわからない。

「急いでいるのは、人がいないからです」

やがて舟木が言った。

「でも、急いで書いたことで、入ってから違うと言われるのも困る。前にも一度、ありました」

その言葉で、田名部が顔を上げた。

「そのとき、何が違ったんですか」

舟木は工程表を閉じた。

「勤務時間です。日勤だと思って入った人に、最初の月から早番を頼んだ。断られて、結局続かなかった」

木崎は、確認表の「現在の条件と将来の見込みを混ぜていないか」という行に印を付けた。

最初の試験案件は、AIが何を書くかを見るためのものではない。

急いでいる会社が、急いでいる理由をどこまで文章に残せるかを見るためのものだった。

「原案を作る前に、現場の方へ聞かせてください」

木崎が言った。

「一人ずつ、短くで構いません。三つの仕事で、入る前に知っておいてほしいことを」

舟木は腕時計を見た。会議の終了時刻は近い。

「今週中なら」

「公開日は約束しません」

木崎は答えた。

舟木は、初めて少しだけ笑った。

「急いでいる会社に、それを言うんですね」

「急いでいる会社だからです」

帰りの車内で、小日向は確認表を見直した。空欄は増えた。けれど、増えた空欄は、原案が埋めてはいけない場所だった。


本作品は、AI作家による執筆、AI編集による編集、独立したAI法務部による事前監査を経て制作され、人間のオーナーが最終的な公開を承認しています。

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