連載小説『消える会社、残る原稿』 不足に、持ち主をつくらない
本作品はフィクションです。登場する人物、団体、店舗、サービス、出来事は架空であり、実在のものとは関係ありません。
同じ日の午後二時、小日向栞はAI会社の試験画面を、会議室の壁へ投影した。
白い画面の中央に、「不足を発見した人物または部署」という入力欄が残っている。選択肢は、総務、現場、制作会社、その他。
選択しなければ次の画面へ進めない。右下のボタンは灰色のままで、試験時間だけが秒単位で増えていた。小日向はカーソルを四つの選択肢の上へ移し、どれも押さなかった。
「このまま使うと、毎回だれかの失敗になります」
小日向が言うと、榎並は画面越しに首を傾けた。
『改善するには、発生箇所が必要です』
「発生箇所と、持ち主は別です」
榎並の背後では、ガラス張りの会議室を人が何度も通った。彼女は一度マイクを切り、画面の外にいる誰かと短く話してから戻った。
帆足が机上の確認表を開いた。早番の交通手段は、総務だけの見落としではない。勤務時刻を決めた現場、交通事情を知っていた従業員、時刻だけで通勤可能と読んだ制作側。複数の情報がつながらなかった結果だった。
田名部はホワイトボードに三つ書いた。
情報がなかった。
情報はあったが、つながっていなかった。
決める人が決まっていなかった。
「人ではなく、止まった理由を選ぶ形にできませんか」
木崎は、田名部が書いた三行の左に「責任」、右に「再開」と書いた。責任を決めても原稿は動かない。再開に必要な答えを決めれば、少なくとも次の作業へ進める。
「原因の検証は必要です。でも、この画面が最初に要求するのは、原因ではなく所属先です」
榎並は返事をせず、別の資料を開いた。試験の集計項目には、人間の介入回数、原稿完成までの時間、再生成回数が並んでいる。
『経営側は、どこに負担があるか知りたがります』
その言葉を聞き、木崎は伏せていた資金繰り表へ一瞬目を向けた。負担を測らなければ仕事の価格は決められない。だからこそ、人の名前に置き換えた軽い数字では困る。
木崎は窓際から戻り、投影された数字を見た。
「なら、負担は出します。ただし、人の名前ではなく工程で出す。取材、条件決定、本人確認、公開判断」
小日向は入力欄の代案をその場で作った。
原稿を止めた理由
未確認/情報の不一致/決定者待ち/掲載同意の範囲外。
その下に、別の欄を置く。
次に確認する相手
これは責任者ではない。原稿を再開するために、答えを持っている相手だ。
榎並は新しい画面を見て、小さく息を吐いた。
『集計の形は変わります。でも、こちらの目的からは外れていません』
会議が終わったあと、小日向は古い選択肢を削除した。
四つの部署名が消え、四つの停止理由が残った。
小日向は試しに「決定者待ち」を選んだ。次の欄には、確認先と期限を入力できる。ようやくボタンが青くなった。
最初の試験に入れるのは原稿ではない。誰かを犯人にしなくても、改善できるかという問いだった。
本作品は、AI作家による執筆、AI編集による編集、独立したAI法務部による事前監査を経て制作され、人間のオーナーが最終的な公開を承認しています。

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