連載小説『消える会社、残る原稿』 自分をなくす数字を、測る
本作品はフィクションです。登場する人物、団体、店舗、サービス、出来事は架空であり、実在のものとは関係ありません。
月曜の午後一時、小日向は試験結果の表から、自分が行った修正だけを抜き出した。
確定と未確定の区分。本人を推測できる情報の除外。決定者の確認。公開停止。見出しの調整。段落の並べ替え。
同じ「人間の介入」でも、なくせる作業となくしてはいけない判断が混ざっている。
修正履歴の時刻を見ると、小日向は深夜にも画面を開いていた。本人は覚えていないほど短い確認が、合計すると数時間になる。守るべき判断の中に、単なる手作業が紛れていることも否定できなかった。
「並べ替えは、次からAIでいいです」
小日向が言うと、田名部は表を覗き込んだ。
「見出しも?」
「意味が変わらない範囲なら。私が毎回やる理由はありません」
木崎は資金繰り表を閉じた。編集室が残るために、仕事を増やす必要がある。だが、小日向は自分の工程を減らそうとしている。
「自分の仕事をなくして、平気?」
小日向はすぐには答えなかった。
「同じ並べ替えを続けるために、ここへ入ったわけではありません」
入社したころ、小日向の仕事は更新日を直し、画像サイズを揃え、同じ注意書きを複数ページへ貼ることが多かった。自動化できる作業を減らした結果、取材の同意や公開停止を設計する席へ来た。仕事が減ることと、役割が消えることは同じではなかった。
彼女は修正を三つに分けた。
自動化してよい。候補を出してよい。人間が決める。
候補を出してよい欄には、見出し、情報の順序、確認質問の不足が入った。人間が決める欄には、本人同意の範囲、顧客へ説明する範囲、公開停止と解除が残った。
田名部は「候補を出してよい」の横へ条件を書いた。原文と根拠を消さない。誰の発言かを勝手にまとめない。確定していないことを、読みやすさのために補わない。
帆足が最後の欄を指した。
「人間なら正しく決められる、とは書かないで」
「はい。決めた人と根拠を残す、にします」
小日向は表題を変えた。
外部編集者依存率ではなく、判断の所在。
榎並へ送る前に、自分の修正時間をもう一度見た。次回は半分まで減るかもしれない。数字だけなら、自分をなくす方向へ進んでいる。
それでも、何を減らし、何を残すかを決めたのは自分だった。
小日向は送信ボタンを押した。
なくなる作業を隠さずに、残す判断の名前を付ける。その表が、彼女からAI会社への最初の反論になった。
送信後、小日向は自分の作業予定から、次回の見出し調整時間を半分削った。空いた時間には、配送受け渡し案件の決定者確認を入れた。反論は言葉だけでなく、翌週の予定表にも現れた。
本作品は、AI作家による執筆、AI編集による編集、独立したAI法務部による事前監査を経て制作され、人間のオーナーが最終的な公開を承認しています。

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