シラーとシラーズは基本的に同じブドウ品種です。名前が違うから別品種、シラーは必ず軽くシラーズは必ず重い、という分け方ではありません。表記は地域の慣習や生産者が示したいスタイルの手がかりになりますが、実際の味は気候、成熟度、醸造、樽、ブレンドで決まります。
最初に見る三つの方向
| 確認すること | 引き締まった方向 | 熟して厚い方向 |
|---|---|---|
| 果実 | ブルーベリー、ブラックベリー | 熟した黒い果実、プラム |
| 香り | 黒胡椒、すみれ、ハーブ、燻製 | 甘いスパイス、チョコレート、樽 |
| 構造 | 高めの酸、締まったタンニン | 高いアルコール、厚い果実、丸い質感 |
胡椒の香りが分からなくても問題ない
シラーで感じる黒胡椒のような香りには、ブドウ果皮に存在するロタンドンという香気成分が関係します。冷涼な条件で目立ちやすい傾向がありますが、温暖産地でも現れる場合があります。また、人によってはこの成分を感じ取りにくいため、胡椒香が分からないからテイスティングが間違いということではありません。
樽由来のクローブやシナモンと、ブドウ由来の胡椒を分けて考えると、同じ「スパイシー」でも好みを説明しやすくなります。
気候と収穫時期が果実とアルコールを変える
比較的冷涼な条件では、酸を保ちながら黒い果実、花、胡椒、オリーブ、肉を思わせる香りが出ることがあります。温暖な条件では糖度と果実の熟度が上がり、アルコール、ボディー、熟した黒い果実が前に出やすくなります。ただし標高、海風、斜面、土壌の水分、収穫時期で結果は変わります。
熟度が足りなければ青さや硬いタンニンが残り、熟しすぎれば酸が低く、アルコールや乾いた果実が支配的になる場合があります。生産者は収穫日、区画、収量を調整し、香りの鮮明さと構造を整えます。
畑では樹勢と房の状態も見る
シラーは樹勢が強くなることがあり、枝が垂れやすいため、仕立てや樹冠管理が重要です。適切な日照と風通しを確保しながら、果実を過度な熱や日焼けから守る必要があります。畑の条件を一語で決めず、地域内の標高や向き、生産者の管理までがスタイル差を作ると考えます。
全房、抽出、樽で形が変わる
果皮との接触が長く、果帽管理が強ければ、色とタンニンを多く抽出できます。果実の濃度と釣り合えば熟成力につながりますが、強ければよいわけではありません。全房発酵では、茎の状態と使用割合によって花、ハーブ、香辛料、質感が加わることがあります。
樽熟成はバニラ、クローブ、煙、トーストの要素を加え、酸素との接触がタンニンの変化を促します。アメリカンオークとフレンチオーク、新樽と使用済み樽、大樽と小樽では影響が異なります。ラベルの「樽熟成」だけでは強さを判断できません。
産地と表記を比較する
| 入口 | 見つけやすい方向 | 確認点 |
|---|---|---|
| 北ローヌ | 黒い果実、花、胡椒、酸、タンニン | 呼称、斜面、年、単一品種か白品種との混醸か |
| 南ローヌ | ブレンドの一部として色、香り、構造を補う | グルナッシュ等との比率、呼称規則 |
| バロッサ、マクラーレン・ヴェイル | 熟した果実、厚み、アルコール、樽 | 古樹、地域、収穫時期、過熟と決めつけない |
| 豪州の冷涼地域 | 酸、胡椒、黒い果実、引き締まった構造 | 州名より具体的地域 |
| 南アフリカ、チリなど | 果実中心から香辛料・樽のある型まで幅広い | 地域の気候、生産者、ブレンド |
シラーとシラーズの名前をどう読むか
豪州ではShiraz表記が一般的ですが、冷涼で引き締まったスタイルを示すためSyrahを使う生産者もいます。反対に、他国で熟した果実と樽を前面に出したワインがShirazを名乗る場合もあります。表記は生産者からのメッセージとして読み、アルコール度数、産地、樽、試飲コメントを重ねて確認します。
料理は胡椒だけで決めない
ラム、牛肉、燻製、焼き野菜、きのこ、黒胡椒やハーブを使った料理が候補です。冷涼型の酸と香りはハーブや赤身肉へ、熟した果実と厚みは焼き目や甘みのあるソースへ合わせやすくなります。辛味が強い料理では、高いアルコールとタンニンが刺激を増やすことがあるため、果実の丸みや提供温度を確認します。
店員さんへ伝える一言
黒い果実はほしいですが、甘く重すぎず、黒胡椒やすみれが感じられるシラーを探しています。酸は保たれ、樽は中程度で、ラムと焼き野菜に合わせます。温暖型との比較候補も一本教えてください。
品質と熟成を読む
熟成型の品質は濃さだけでなく、酸、果実、タンニン、アルコール、樽が一体か、香りに明瞭さと複雑さがあるか、余韻が構造とつながるかで考えます。瓶熟成で革、肉、土、乾いた果実などの香りが加わる場合がありますが、すべてのシラーが長期熟成で良くなるわけではありません。保存状態と現在の飲み頃も必要です。
参考資料
Vins Rhône: Syrah
WSET: What gives Syrah/Shiraz its peppery spice?
ワイン選びエージェントを使う
ブレンドでは主役にも補助にもなる
北ローヌの一部ではシラーを中心に、規則の範囲で白ブドウを一緒に発酵またはブレンドする場合があります。南ローヌや豪州などでは、グルナッシュ、ムールヴェードル、カベルネ・ソーヴィニヨン等と組み合わせられることがあります。シラーは色、黒い果実、香辛料、タンニンを加えられますが、比率だけでは最終的な味を説明できません。各品種の熟度、発酵、抽出、熟成、ブレンドの時期までが関わります。
ラベルの言葉を過信しない
Reserve、Old Vine、Barrel Agedなどの語は、国や制度によって法的意味が異なるか、明確な統一基準がない場合があります。古樹は低収量や果実の集中につながる可能性がありますが、樹齢だけで品質は決まりません。アルコール度数も厚みの手がかりにはなりますが、酸、果実、抽出、残糖と合わせて読みます。裏ラベルの香り表現は購入の仮説として使い、保証とは考えません。
提供温度と時間でスパイスの位置が変わる
温度が低すぎると香りが閉じ、タンニンが硬く感じられることがあります。高すぎるとアルコールと甘い樽香が前に出る場合があります。少量をやや低めの温度から試し、黒胡椒、花、果実、樽のどれが先に開くかを見ます。若い高タンニンのワインでは空気との接触で香りと質感が変化することがありますが、長時間置けば必ず良くなるわけではありません。

コメント