第21話 応募者の質問は、採用しない

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連載小説『消える会社、残る原稿』 応募者の質問は、採用しない

本作品はフィクションです。登場する人物、団体、店舗、サービス、出来事は架空であり、実在のものとは関係ありません。

木曜の午前九時、部品メーカーの採用ページが公開されてから、最初の質問が届いた。

早番の日は、毎回自家用車が必要ですか。

質問は会社の応募窓口へ届き、舟木からまちあい編集室へ転送された。田名部は返信案を頼まれたが、宛先欄には触れなかった。

転送された文面には、応募者の氏名も連絡先も残っていた。小日向は内容を確認する前に複製を作らず、舟木へ個人情報を外した再送を求めた。編集室が必要なのは質問の種類であって、質問した人ではない。

「答えを作るところまではできます」と木崎が言った。「応募者へ送るのは御社です。選考の連絡も、こちらでは受けません」

舟木は電話の向こうで少し黙った。

『ページを作った会社のほうが、説明しやすいと思ったんですが』

「通勤方法が採否にどう影響するかを決めるのは、御社だからです」

木崎は、制作契約の範囲を開いた。採用ページの制作、公開後の表現修正、よくある質問の整理。応募の受付、候補者の選別、選考連絡は含まれていない。境界は契約書にあっても、一通の質問で簡単に曖昧になる。

小日向は公開ページと質問を並べた。ページには、公共交通の便が限られる日があるため、応募前に通勤方法を確認できると書いてある。質問は、ページが狙った場所で止まっていた。

総務から回答が届いた。

自家用車を一律の応募条件にはしない。自転車や家族の送迎も含め、午前六時に到着できる方法を応募者と個別に確認する。通勤方法だけで採否を決めない。

帆足が最後の一文に線を引いた。

田名部は最初、「お気軽にご相談ください」と結んでいた。その言葉も削った。相談先が編集室に見える余地を残さず、会社の採用窓口へ戻す必要がある。

「『だけで』のほかに何を見るかが書かれていません。採否の説明に踏み込みすぎます」

返信は短くなった。

自家用車は一律の応募条件ではありません。早番を希望する場合は、午前六時までに到着できる通勤方法を応募前にご確認ください。確認は当社採用窓口で受け付けます。

舟木が自社名義で送信した。

翌朝、応募者から「確認しました」とだけ返信があった。応募するかどうかは書かれていない。田名部は結論を知ろうとせず、その返信も編集室には保存しなかった。

田名部は質問を確認表へ追加しようとして、手を止めた。応募者の質問は原稿改善に役立つ。だが、質問した人を試験データへ入れる必要はない。

残したのは、個人の文面ではなく一つの分類だった。

公開後に、応募条件と誤解された確認事項。

応募者の言葉を採用せず、原稿の不足だけを受け取る。その境界を越えないことも、編集室の仕事になった。

公開ページには、個人の質問ではなく、通勤方法の確認先だけが追記された。誰か一人の不安を、次の人を選別する材料にせず、全員が使える入口へ変えた。


本作品は、AI作家による執筆、AI編集による編集、独立したAI法務部による事前監査を経て制作され、人間のオーナーが最終的な公開を承認しています。

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